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執筆者の写真英伸 後

建設企業のデジタル化、その実情(私見)

更新日:2021年6月17日

メインサイトのほうに「建設企業のデジタル化、その現在位置~クラウド出面管理」という表題で少し長めの記事をUPしました。

この記事に関連して私が以前籍を置いていた電気工事会社(A社)の実情を振り返ってみます。


A社は独立系のなかでは大手といっていい事業規模で首都圏を中心に内線工事を展開していました。

内線とはビルや工場の内部の電気設備のこと。

独立系とはいっても大規模案件はほぼ大手ゼネコンの下で仕事をもらっていました。いわゆるサブコンです。

ゼネコンヒエラルキーの比較的上位に位置していましたので、かなり偉そうに下請けを使っていました。



このA社、一応EDPという基幹システムを運用していました。

元々はNECの建設業向けパッケージシステムを11億もかけてA社用にカスタマイズした代物です。

受注管理から予算管理、調達管理、労務管理、

引き合いから竣工に至るまで予算管理を中心にその過程を記録し、社内で共有する。

そして注文書や請求書といった伝票を都度発行する。

それがこの基幹システムの役割でした。


受注前の業務、引き合い~見積もり~受注までは営業が行います。

A社には見積予算予算用にこの基幹システムとは別に、これも数億円かけた積算システムというのがありました。

しかし、この積算システムで積み上げた見積もり金額は参考程度。

見積金額は営業が決めます。

施主や元請からこっそり指値を聞き出してくる営業はまだまし。

営業部長や役員の一声による出精値引き30%みたいな見積もりも往々にして行われていました。

(まあ、しかしこれはベテラン営業の野生の勘のようなものがあったのかもしれませんが。)


で、こうして営業がとってきた案件を利益を出して収めるのが現場の仕事です。

実行予算の管理とは要は外注先からの見積もりと査定です。

当初の見積もりに対して代人が査定をして都度都度ネゴを行う。その結果として採算ぎりぎりだった現場で利益がでる。

このプロセスが代人の評価につながります。


ただ、査定とネゴがまじめに行われることはあまりありません。

現場は受注額が決まっているわけですから、利益を出すための外注費用はおのずと決まってきます。

そのラインを予算会議で決める。

そのラインに収まる指値をして、協力会社(=下請け)に呑ませる、あるいは受けてくれるところを探す。

そうしておいて、最初は採算ラインの外注費の2~3割増しくらいの見積もりを作らせ、何度かのネゴで示し合わせた見積もりに落ち着かせる、という。

まさに出来レースを公然とみんなが行っていたわけです。


この出来レースに基幹システムは何か寄与するところはあったのでしょうか?

もちろん会社としてはここに集積された情報を集計することでで売り上げ予想や利益予想を行うことができる。

しかし現場はどうでしょうか。

このシステムを使わなければ伝票が発行されないわけですから、みんなシステムは使います。

しかし、査定とネゴで上長や幹部からの評価を得るために、システム上に出来レースを入力・記録するという行為に生産的な効果はありません。


結局この基幹システムはA社のレガシーな業務を変えられず、却って現場の負担になっていたわけです。


A社はサブコン大手なので資金力があり、基幹システムの導入は実現させました。

この時点で「デジタル化」に関しては業界平均からすれば合格点がとれているわけです。


しかし、実情は投資に見合ったリターンはなく、このシステムを発展させて会社の収益構造を強化しようという、イメージもありません。


いま、i-ConstructionやBMI、CMIなど建設業界を取り巻くデジタル化の波は高く、強くなっています。

今は、その波は今のところゼネコン、しかも大企業に及んでいます。

そしてこの大手ゼネコンが業界全体のデジタル化を引っ張ってゆくことが期待されているのでしょう。

しかし、それに追随する立場のサブコン以下のデジタル化の現状はここまで述べた通りです。

BPRはもちろん、DXなどからは程遠い現状がここにあるわけです。



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