出面管理システムを用いた建設業出来高管理①~②で出面情報の拡張性と課題について解説しました。
また、その収集を自動化して正確な保存と利用を可能にする「クラウド出面管理DMEN」のご紹介もしました。
出面管理システムを用いた建設業出来高管理③はこの出面情報を用いて何ができるか、というのが本題です。
ひとつの例として出来高管理について説明します。
まず、建設プロジェクトにおける管理を紹介します。
建設業では現場における4大管理というものがあります。
-工程管理
これは工期を守るために工事全体のスケジュールを把握し調整する ために行います。
つぎに
-原価管理
これは工事の利益を確保するために工事にかかる費用を管理 するために行います。
-品質管理
これは品質試験により作業毎に品質を確認しながら工程を進める ことです
-安全管理
これは安全な環境を整える業務を指します。
このうち品質管理と安全管理は相反するものではなく、安全も品質のうち、といった解釈もできます。
しかし残りの2つ、工程、コスト、と品質は強いトレードオフ関係にあります。
トレードオフとは負の相関性を持つということです。
すなわち、品質を上げるためにはコストを厳しくする必要があり、また工程にも厳しい影響がある。
コストを下げようとすると、品質が悪くなり、作業員も集められなくなり工程が遅れてしまう。
こうした相関性があるために、この4大管理、別々に行うというのは意味がなく、むしろ危険です。
つまり、他の項目とのバランスの上にたって行う必要があるわけです。
こうした観点で、コスト(C)と工程(D)を価値(Value)という共通の尺度で管理しようとする試みが出来高管理です。
出来高というのは建築の仕上がり具合、と理解していいと思います。
それを、金額とか工数とかという尺度で数値化してコストのかかり具合と比較分析を行うわけです。
この出来高管理の代表的な手法がEVM(Earned Value Management)です。
EVMは出来高管理システムの代表的なもので、米国の国防総省で開発されたものです。
歴史は古く1962年にミニットマンミサイルの開発計画でその原型が採用され、1998年に米国規格協会(ANSI/EIA)がEVMSとして企画化しました。
米国では一定額以上の政府系の入札で応札業者にこのEVMS対応が義務付けられています。
また、米国以外でもカナダ、英国、スウェーデンなどが国内企画として採用しています。
先ほどご紹介したように、コストと工程を価値(Value)という同一の評価基準で管理するのが特徴です。
EVMで用いる管理項目について説明します。
BACというのはBudget At Completion プロジェクトの当初予算のことです。
協力会社への外注費、現場経費、工事資材等が含まれており、着工前に必ず決定されています。
今回、ご紹介する出来高管理の手法では、BACには予算ではなく、総人工を適用しします。
TcはTarget day of Completion 当初工期のことです。
PVはPlanned Value 計画出来高のことでベースラインともいいます。
時系列に想定している出来高をプロットしたもので、この終着点がBACになります。
EVはEarned Value これが出来高です。その時点で完了している工程を計画出来高ベースでプロっとします。
今回、ご紹介する出来高管理の手法では、EVには予算ではなく、人工を適用しします。
ACはActual Cost 実工事費です。これはその時点における出来高に関係なく、その時点に至るまで投下したコストの累計をプロットします。
今回、ご紹介する出来高管理の手法では、ACには実費ではなく、人工を適用しします。
こうして各項目をプロットして出来上がったグラフから、さまざまな分析が行えます。
EVMの特徴は現状把握だけではなく、将来予測ができることです。
現状把握では
-SV Schedule Variance
工程差異のことです。その時点におけるEVとPVの差になります。この絵ではbとcの差になります。
工程差異といっても時間的な差ではなく、その差をValue換算したものといえます。
時間的な遅れや進みはこの絵ではaがそれに相当します。遅れている場合はこのaを工程遅れ、と言います。
-CV Cost Variance
出来高差異といいます。その時点におけるEVとACの差(EV-AC)になります。この絵ではbとdの差になります。
CVが0より大きければ出来高内に実工事費が収まっている、
CVが0より小さければ出来高より実工事費が超過している、ということになります。
-SPI Schedule Performance Index
工程効率指数 で「計画出来高」に対する「出来高」の割合を表現します。
EV/PVでSPIが1より大きい場合は工程が計画より進んでいることを示し、
SPIが1より小さい時は工程が計画より遅れている、と判断されます。
-CPI Cost Performance Index
出来高効率指数で「実工事費」に対する「出来高」の割合。評価時点での出来高面から見た達成状況を表現します。
EV/ACでCPIが1より大きい時、出来高内に実工事費が収まっていることを示し、
1より小さい時は出来高より実工事費が超過していると判断されます。
将来予測もできます。
-EAC Estimate at Completion
完成時予測工事費は完成までの必要総予算を評価時点で予測します。
-Tec Time Estimate Completion
完成時予測工期で完成までの必要工期を評価時点で予測します。
双方とも計算式などの紹介は省きますが、現時点におけるCPIやSPIの傾きで残りの出来高を割ることで完成時点のコストや工期を算定するわけです。
次回はDMENで収集された出面情報を用いた出来高管理の手法を、簡単な演習を行いながら紹介してゆきます。
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